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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(あ)3619号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人堀切真一郎、同飯沢高の上告趣意第一点について。

所論は、単なる訴訟法違反、事実誤認の主張であって適法な上告理由とならない。

同第二点について。

所論は、被告人が借入金を佐々木茂名義の預金口座に預け入れた行為をもって横領罪が成立するとの前提に立って、原判決の判例違反を主張するものであるけれども、右は原判決の認定しない事実若しくは原判決の事実誤認を前提とするものというの外なく、従って、所論引用の判例は本件に適切ならず、結局論旨は適法な上告の理由とならない。

同第三点について。

所論は単なる訴訟法違反の主張であって適法な上告の理由とならない。

(刑訴三二五条の任意性の有無の調査は、裁判所が適当と認める方法によってこれを行うことができ、かつ供述調書の方式のみでなく内容自体も右調査の資料となりうるのであって、右調査の事実は、これを必ず調書に記載しなければならないものでないことは当裁判所の判例〔昭和二六年(あ)第一二九五号同二八年一〇月九日第二小法廷判決、集七巻一〇号一九〇四頁〕とするところである。従って、所論「佐藤清作の検察官に対する供述調書」の任意性について、公判調書に特にこれが調査に関する記載がないからといって、これが調査をしなかったとの所論は採用し得ず、寧ろ、右供述調書については、弁護人から特信性がないから証拠調に反対の旨の異議申立があり、右異議は理由なしとして却下された旨公判調書に記載されているところからみれば、右異議についての裁判に際し、その任意性の有無についても調査せられたものと解するを相当とする。)

同第四点について。

右は結局、背任の犯意に関する原判決の事実認定を非難するに帰着し、上告適法の理由とならない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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